「あー、わかったわかった! 試験が終わったらなっ」
 大きめの声でそう言ったのは佐野くんだった。
 私は物思いに耽っていたこともあり、なんの話だかサッパリわからない。
「……なんのお話?」
 小さな声で訊いてみると、ふたりは沈黙して私を見た。
「ごめんなさい……。お話聞いてなくて」
「いい、御園生あんま気にするようなことじゃないから」
「ひっでーなっ! 俺のシックスティイインの誕生日だぞっ!」
 え?
「海斗くん、今日お誕生日なのっ!?」
「ちゃうちゃう、試験前日の七月一日」
 言われて納得してしまう。
 それは実に最悪なタイミングだ、と。
 しかも、学生の期間は毎回毎回試験前か試験中というとんでもなく最悪な時期ではないだろうか……。
「翠葉、正直だな……。そこまで同情してくれんでもよろし」
 海斗くんは肩を竦めてくくっと笑った。
「そうそう、海斗はただ単に誕生日を祝ってほしいだけだ」
 と、呆れたように佐野くんが口にする。
 なるほど……。だから試験が終わったらって話だったんだ。