……俺、すごい普通。いたってまとも。
 錯乱状態でなければ興奮状態にもなくて、身体中の力が程よく抜けてて、リィじゃないけど、リラックスしている状態と言えた。
 あぁ、ニュートラルってこういう感じをいうのかもしれない。
 気を逸らそうとする努力もせずに、かといってリラックスしようと心がけているわけでもなく、さっきまで抱いていたどうにもならない感情は今どのあたりにあるんだろう。
 力が抜けたからか、右手に握りしめていたはずの紙が足元に落ちた。
 それを拾おうと腰を屈めたとき、あんちゃんと同じ目線になって言われた。
「俺はカウンセラーじゃないし友人ってわけでもない。上司でもなければ部下でもない。架空だけど唯の兄だよ。普通のそこら辺にいるひとりの人間。だから、もし唯が何かを話したとして、俺は解決策を見出してはやれないし、俺個人の主観でしか答えられない。だから聞き出すつもりは毛頭ない」
 きっぱりと言いきり、後ろで横になるリィに目をやった。
 ……この人になら話せるかもしれない。
 そう思った瞬間だった。