光のもとでⅠ

 リィの寝るその部屋に戻ると、足元にしかかかっていなかったはずの羽毛布団が手繰り寄せられたあとがあった。
 どうやら廊下で座り込んでいた人の言っていたことは嘘ではないらしい。
 俺がひとりいなくなっただけで多少涼しくなった部屋に寒さを感じたようだ。
 もう少し時間が経っていたら、肌寒さに目を覚ましたのだろうか……。
 ……あれ? 俺、かなり冷静になったんじゃない?
 そんなことを考えているとあんちゃんがカップふたつを手に戻ってきた。
 飲み物を用意している間に俺が出て行くなんてことを考えていなかった顔。
 この兄妹ってふたり揃って絶対に無防備で人を信用しすぎだと思う。
 いつか痛い目みるんじゃないの?
 いや、それともこれこそがこの兄妹の武器なのかな。
 ここまで信用されていると、逆に裏切る側の良心の呵責ってものが悩ましくなる。
「ね、あんちゃん……ここで話すつもりじゃないよね?」
「ここで聞くつもりだけど……。別に話さなくてもいいし。さっき言ったけど、紙に書けば?」
 と、今にも適当な紙と筆記用具を出そうと動きだしかねない。
「リィ、起きるんじゃない?」
「あぁ、部屋の設定温度一度だけ落として」