自分を叱咤してようやく鍵を回すと、鳴るはずのオルゴールは鳴らなかった。
 不思議に思いながら、鍵を差し込むことで開かれる最後の板を外すと、丁寧にたたみこまれた白い紙が入っていた。
 その存在に心臓が暴れだす。
 感情が及ぼす人の行動はすごいと思う。
 気づけば自分はデスクから少し身を引いていた。
 けれど、視線は折りたたまれた紙から離すことをできずにいる。
 色褪せてもいない紙はつい最近入れられたんじゃないか、と思うようなそんな錯覚を引き起こす。
 間違いなく三年以上の月日が経っているにも関わらず……。
 時の経過を示すものは乾燥した花のみだった。
 指先の感覚に驚き、俺は手に持った紙をまじまじと見つめる。
「俺、ちゃんと起きてるよな……」
 いつ手に取ったのか記憶にない。
 たぶん、自然と手が伸びたのだろうとは思うけれど、これを俺は開くのだろうか……。
 また気がついたら開いていた、とか気がついたら読み終わってた、とかそういうのはごめんだ。
 きっちりとデスクにつきなおし、手紙を広げることにした。
 宛名は"唯へ"というとてもシンプルなもので、書き出しも軽快なものだった。