凝った細工はなく、中学生だった俺が彫刻刀で彫り、色をつけてニスを塗っただけの木箱。
 中にはビロード生地に似た布でそれっぽく内装を施してある。
 これを作ったときばかりは手先が器用で良かったって思ったっけか……。
 開けると、中にはしばらくぶりに見るトルコ石の鍵が入っていた。
 トルコ石の鍵とガーネットの鍵は磁気があり、プラスマイナスで引かれ合う。
 そうしてくっついた状態で底板の下に隠れる鍵穴に入れるのだ。
 底板を開けると、何か乾燥した花が二種類入っていた。
「なんの花……?」
 ひとつはなんとなくわかる。
 小さい花でセリが好んだものといえば金木犀しか思い浮かばないからだ。
 しかし、残念ながら香りはしなかった。
 もうひとつの花は検討もつかない。
 ひとつになった鍵を鍵穴に差し込むものの、次の作業――回す、という行動に移れない。
 ここで止まってどうする――。