二十分もリィの寝顔を見ていると、小さなノック音と共にあんちゃんが入ってきた。
「やりかけのものだけ持ってきた。今日はこれ片付けたら唯も寝ろよ? 明日からは俺がサポートにつく分、少しは楽になるはずだから」
 言うと、静かにドアを閉めて部屋を出ていった。
 俺の手はというと、まだつながれたまま。
 寝てるのに、どうしたらこんなにしっかりと掴んでいられるんだか……。
 そう思った次の瞬間、それまでの力が嘘のように抜けた。
 手が、放された――。
 少し汗ばんでいた手の平に空気が触れて清涼感を感じる。
 それとは別に、心が心許なさを感じていた。
 エアコンが入ってはいるものの、設定温度は二十八度とさほど低くはない。
 外気温との差が開きすぎると、リィの身体が適応できなくて学校に通うのが難しくなるからだそう。
 エコとかそういうのが理由じゃないところがまたおかしい。
 世間ではエコのために設定温度を高めにとか言われている時代なのに。
 リィにはタオルケットがかけられていて、そのうえ、足元だけに夏用の軽い羽毛布団がかけられている。