光のもとでⅠ

「安心していい……。鍵がないとそれはある程度のところまでしか開けられない仕組みになっているだろ。俺が見つけられたのはビロードの布張りの板が外れるところまで。その先の鍵穴の中は見ていない。……いじらなかった。開けないほうがいい気がしたから……。翠葉にはビロードの板が外れることも話してない」
 まいった……。
 ただのオルゴールではないことがばれているとは思っていなかった。
「別に今じゃなくてもかまわないんだろうけど、翠葉と一緒じゃ開けられなかったんだろ? この部屋を貸すよ……。それと少し向き合え。今開けなくてもいい。それでも、少し落ち着け。今の唯は家から出せない」
 そう言うと静かに立ち上がって部屋を出ていった。
 そうは言われても、俺はオルゴールと向き合うことはできなくて、すぐにその部屋を出た。
 あんちゃんは様子を見にリィの部屋に立ち寄っていて、リィはベッドに寝かされていた。
 遠目に、一筋の涙が頬を伝った痕が見えた。
 俺に気づいたあんちゃんは、
「湊さん、翠葉のことお願いします」
 そう言って俺の背に手を回し、そのままリビングへと連れて行かれた。
「まだ向き合うのは無理か」
「無理に決まってる――三年もこの手から離れてたんだ。簡単なことじゃないっ」