リィを振り払ったとき、即座に湊さんとあんちゃんが部屋に駆けつけた。
 俺とリィは昔話に気を取られていて、湊さんが来たことには気づいていなかった。
 湊さんはすぐにリィの診察を始め、あんちゃんは俺の腕をガッチリと掴んで自室に連れていった。
 そして、何があったと訊かれると思いきや、仕事の話をされた。
「秋斗先輩の状態は夕方に知った」
 と、口にして。
 あの状態のリィを見てなんでいきなりその話なんだ、とは思ったけど、逆にそれが良かったのかもしれない。
 目の前が見えなくなっていた俺は、一気に現実に引き戻された感じがした。
「え? あ……さっき夕飯のときの話からすると、そんな気はしてましたけど」
 なんて、なんとも間抜けな返答をした覚えがある。
「来週にならないと秋斗先輩自体は仕事ができる状態にならない。それまでは唯のサポートにつくことになってる。必要な書類や資料があるなら俺にメールしてくれてかまわない。なるべく早くに揃えて持っていくよ」
 そんなふうに仕事の話を始めたのだ。