「ほら、翠葉。ちゃんと横になって寝な」
 あんちゃんが促すと、コクリ、と頷きながら雪崩落ちるようにパタリと横になった。
 未だ手はつながれたまま。
「落ちたな」
 と、あんちゃんはくつくつと笑っている。
「あの……俺、本当にここで……しかも左手確保されたまま寝るの?」
 訊かずにはいられなかった。
「そうだな……。ま、手はそのうち放してもらえるだろ」
「あんちゃん、面白がってませんか?」
「若干な。唯も夜に仕事しようと思ってたんだろ? 必要書類を秋斗先輩の家から持ってくるから鍵貸して」
 社外秘とはいえ、あんちゃんにはそんなものは通用しないのだろう。
 実際、秋斗さんが関わる開発の資料集めをしているのはほとんどあんちゃんであると蔵元さんからも聞かされている。
 さっき、荒れに荒れた俺を落ち着かせたのもあんちゃんと言って過言ではなかった。