「あぁぁぁぁぁぁぁっっっ」
「御園生さん、ここ一応病室」
 司の動じない物言いに我を取り戻す。
「秋斗先輩、めちゃくちゃ文句言いたい気もするんですが、やめておきますっ。でも、翠葉のことは泣かさないでください。あいつのキャパそんなに広くないんで」
「でも、秋兄がこんな状態になったのは翠にも原因があると思うけど?」
 司は目を伏せたまま淡々と話す。
「司っっっ」
 さらに秋斗先輩の表情が険しくなった。
「……どういうことですか?」
 先輩は口を噤んで俯いてしまった。
 司がため息をひとつつくと、
「翠が頭痛を起こした日のこと。兄さんが秋兄に電話して怒鳴り込んでるんです。この人、こう見えて結構繊細にできているから悩んだんじゃないですか? 胃に穴なんて一晩もあれば開きますから」
 先輩に視線を向けると、またしても司を睨みつけている状態だった。
「じゃ、俺帰ります。御園生さん、悪いんですが、この人の言い訳とか仕事のこととか聞いてやってください」
 そう言って、俺の前を横切り司は部屋を出ていった。
 司……おまえ、どうしてそんなに飄々としてるんだよ。
 俺、残されて秋斗先輩とどう対峙したらいいんだよ――。