立花さんを送り届け、また学校近くまで戻り佐野くんを降ろす。と、バックミラーにはきっちりと腰を折って礼をする佐野くんが映っていた。
「彼、律儀だね?」
「そうですね……」
 簾条さんはなんてことないように口にする。
 きっとあれは送った俺に、ではなく、立花さんとの時間を作った簾条さんへのお礼も含まれていたのだろう。
「で、簾条さん」
「蒼樹さん、お話が――」
 同じタイミングで声をかけ、互いが途中で話すのを止める。
「何?」
「なんでしょう?」
 尋ねるタイミングまで同じで思わず笑ってしまう。
「いいよ、先に簾条さんが話して?」
「……お時間ありますか?」
 俺は好都合だけど……?
「大丈夫だよ。それならどこかカフェにでも入る?」
「……そういうところで話す内容でもないんです」
 簾条さんは珍しく苦笑を見せた。