光のもとでⅠ

 実のところ、今日は痺れを切らせてやってきた、というのが正しいらしい。
 翠葉は言われなければそんなことには気づきもしないのだろうけれど、この子たちはそういうことをひとつひとつ翠葉に教えてくれるだろう。
 そうやって色んなことを知っていけばいい。
 慌てなくていい。
 少しずつ外の世界を知ればいいんだ……。
「そんな顔をしているときは、たいてい翠葉のこと考えていますよね?」
 え……?
 エレベーターの中で簾条さんに声をかけられ周りを見ると、三人の視線が自分に集っていた。
「あはは、俺、どんな顔してたのかな」
「……そうですねぇ。娘を嫁に出す父親?」
 そう言ったのは立花さん。佐野くんは笑って、「あ、そんな感じっすね」と請合う。
「ねぇ、君たち……。俺二十四になったばかりなんだけど、何歳で子どもつくれば十七歳の娘ができるんだよ」
「やだ、蒼樹さん。まともに取らないでくださいよ」
 そう言って簾条さんがクスクスと笑った。
 肩口で切りそろえられた髪の毛がさら、と動き、花が綻ぶように笑う彼女に視線を奪われる。
 やっぱり、この子しか考えられないんだよな……。