「で、簾条さん」
「蒼樹さん、お話が――」
 え?
 話を切り出そうとしたら、同じタイミングで話しかけられた。
「何?」
「なんでしょう?」
 またしても声が重なる。
 すべてが同時で笑わずにはいられなかった。
 蒼樹さんもクスクスと笑っている。
「いいよ、先に簾条さんが話して?」
 言われて少し悩む。
 あまり急いで話したい話ではない。
「……お時間ありますか?」
 訊くと、蒼樹さんは首を傾げながら、
「大丈夫だよ。それならどこかカフェにでも入る?」
 正直、面と向かって話すのはかなり勇気がいる……。
「……そういうところで話す内容でもないんです」
 結局、裏道に入ったところにある川沿いに車を停めて話すことにした。