「じゃ、佐野くんは後回しでもいい?」
 蒼樹さんが佐野に確認を取ると、
「かまいません」
 と、佐野は少し小さな声で答えた。
 よし、これで目論みひとつは達成、と……。
 あとは自分のこと。
 次の日曜日のお見合いの件だ――。
 蒼樹さんは……この人は私の隣に並んでくれるだろうか。
 道の案内をしつつ、メガネの脇から見える素顔を覗き見る。
 どうやって切り出そうか、どうやって話そうか……。
 とりあえず、佐野をバス停で下ろせばふたりになれる。
 そのときに思い切って話すしかない。
 桃華、しっかりしなさいっ――。
 お見合いなんて形で相手を決められたくないのなら、自分でどうにかするしかないじゃない。
 隣に並んでくれる人が誰でもいいわけじゃない。
 ちゃんと――ちゃんと自分の選んだ人と、好きな人と並びたい……。