翠葉の手から落ちそうになったグラスを私が受け止められたのは奇跡だと思う。
 テーブル向こうにいた男ふたりもベッドサイドまで寄ってきて、翠葉をじっと見る。
 口火を切ったのは佐野だった。
「あーぁ。こんな悩んでるんだったらもっと早くに来るんだったよ」
「本当……翠葉、全然メールくれないんだもん」
 と、飛鳥がむくれる。
「いつになったら連絡くるのかと思って携帯が片時も離せなかったじゃない」
 私も加勢すると、翠葉は不思議そうに首を傾げた。
 海斗だけが面白そうに笑っていて腹立たしい……。
「こいつらさ、お見舞いに来たくて仕方なかったんだ。でも、いつまで経ってもお呼びがかからないから連絡くるまではメールしないとか、電話かけないとか意地になってたバカども」
「そうだったの……?」
 三人揃って渋々頷く。
「ごめんね……。こういうの初めてで、誰にどうやって相談したらいいのかわからなくてずっといっぱいいっぱいだったの」
「翠葉らしいっていったら翠葉らしいけど」
 私が佐野に振り、
「俺らのこと眼中なかったよな?」
 佐野が飛鳥に振る。