六月十三日日曜日、曇り――。
 早朝から身体にまとわり付くような湿気の中、姉さんの車が停まる駐車場へと歩いていた。
 水色のそれを見て、実にらしくない、と思う。
 しかし、内装がチャコールグレーで統一してあたりはそれっぽいかもしれない。
 姉の湊は標準サイズの女性からは少々かけ離れている。
 身長にしてもやることの豪胆さをとっても、何につけても、だ。
 そんな姉が乗る車としては相応しいとは言いがたい車が目の前にある。
 ラパン――軽自動車。
 姉さんの好みは謎だ……。
 まるで昨日洗車されたかのようにきれいなボディに身を預け、マンションの九階に目を移す。と、姉がひとつのドアから出てきたところだった。
 時刻は午前六時四十五分。
 今日は朝早くに予定にはなかった手術が一件。
 秋兄の手術だ。
 昨日の夕方に輸血パックが届いたという情報は父さんから聞いている。
 輸血の部分だけを考えれば俺が病院へ行く必要性はどこにもない。
 けれど、家で手術終了の知らせを待つ気にもならず、手持ちぶ沙汰にシャーペンの芯を出したり引っ込めたりしていると、
「秋斗で輸血パック使うんだから、あんたの血を献血してらっしゃい」
 と、姉さんに言われた。
 そんな姉の一言で、今俺はここにいる。