エレベーターの中で、
「手術は明日の早朝に行います。今は秋斗の意識が戻るのを待つのみ。その頃には輸血パックも届くと思います。とりあえず、あのバカが病院を抜け出さないように今日明日は付き添っていただけると助かるのですが……」
「かしこまりました。責任を持って押し留めます」
「よろしくお願いします」
 十階はそれまでの病院の様相とは異なっていた。
 どこかホテルのような趣がある。
「ところで、ここのところ秋斗の体調に変化はありましたか?」
 尋ねられて考える。
「いえ……。私が知る限りでは昨日までは変わりなくお過ごしでした。ただ、普段からコーヒーを飲みすぎな感は否めませんし、アルコールもお飲みになられます。あとは……翠葉お嬢様のことをお気にされていたようです。正直、昨夜楓様からご連絡があったあとは、真っ青でいらっしゃいました」
「……それが原因か。ま、自業自得なんですがね」
 楓様はため息をついた。
「普段はなんでもそつなくこなすくせに、こんな局面で身体に響かせるなんて、社会人失格です」
 楓様は容赦なくお言葉を口にされる。