そのまま救急車に乗り病院に着くと、救急車の乗り付け口には楓様ともうひとりの医師、それから数人の看護師が待機していた。
 秋斗様が処置室に運び込まれたあと、俺は廊下の長椅子に座りこんだ。
「胃潰瘍か十二指腸潰瘍か?」
 吐血を見て素人が考えられるのはそのふたつくらいなものだ。
 しかし、秋斗様はそんなにも繊細な人だっただろうか……。
 どれくらいした頃か、処置室から楓様が出ていらした。
「秋斗様は……」
「典型的な胃潰瘍だと思われます。出血はどのくらいでしたか?」
「吐血は三回。そこら中が血だらけでした」
「輸血と手術が必要になるのですが、ショック状態のままでは手術はできませんし、今はまだ輸血パックも届いていません。現在は点滴で凌いでいます。病室は十階になりますので、私たちは先に移動しましょう」
 そう言うと、楓様が先に立ち、厳重なセキュリティが敷かれた十階へと向かった。