光のもとでⅠ

「おまえは病人らしい格好をしてとっとと横になれ」
 楓に言われ、渋々ベッドに上がりこむ。
 家から持ってきたパジャマに着替え、横になると腕を取られた。
 どうやら再度点滴につながれるらしい。
「それともう一本」
「はっ!?」
 ステンレストレイには真っ赤なパックが載っていた。
「……輸血?」
「おまえの意識が戻るまでは待っていたんだ。輸血にも手術にもリスクがあるから同意書が必要になる。で、起きた途端におまえはなんて言ったかわかるか?」
「……一度帰らせろと申しました」
「そのとおり。通常あれだけ吐血した人間が言える言葉じゃないから」
 楓が俺と似た顔でにっこりと笑う。
 ……あぁ、司が湊ちゃんを避けるのがなんとなくわかった気がする。
 自分と同じ顔が目の前にあるのってぞんがいやだわ……。
「まいった……」
「自業自得だ。とっととサインしろっ」
 同意書二枚にサインをしながら、
「楓くーん……しばらく会わないうちに口が悪くなったんじゃないの?」
「おまえがアホすぎるからだっ」