待たせていたタクシーに乗り込み、俺たちは病院へと戻った。
 先ほどと変わらず裏口につけてもらい、院内に入ってすぐに車椅子に乗せられた。
 病室に戻ると、中には楓と伯父の涼さんがいた。
「仕事のしすぎなんじゃないか?」
 涼さんが呆れた顔で声をかけてくる。
「はは……お世話になります」
「典型的な胃潰瘍だろう。明日には手術を行う。一週間から二週間は抗生物質の連続投与と輸血。それから一ヶ月くらいは胃酸を抑制する薬を飲むことになるだろう。あとは造血剤もだな。くれぐれも慢性化させないように」
 淡々と言われ苦笑がもれる。
「吐血するほどだったにも関わらず、兆候はなかったのか?」
「とくには……。今朝起きたときから少しおかしかったくらいで吐血するまでなんとも思ってませんでした」
「……父さん、裏情報追加。この秋斗が恋わずらいで一晩で胃潰瘍になった」
 楓ええええ……。
「ほぉ……それは興味深い。ま、胃潰瘍なんて一晩もあれば十分に作れる。が、存外治療期間は長い。通院はさぼらないように。その前に手術だが、くれぐれも病院を抜け出したりしないように」
 にこりと笑って釘を刺された。