「両思いなんて浮かれてたけどさ、全然俺の片思いだよ。……痛感ってこういうこと言うんだろうな」
 でも、いつまでもこうしているわけにはいかない。
 時計はすでに六時前を指しているのだから。
「とりあえず、必要なものをまとめてくるわ」
「資料でわかりそうなものは私も手伝いますので、秋斗様は先に身の回りのものをピックアップしてください」
「助かる……」
 蔵元に手伝ってもらい、なんとか必要なものはすべてまとめることができた。
 病室に全部運んでおけば問題はないだろう。
「エアコンは切りましたしガスの元栓も締めました。明日には唯がここに来るのでとくに問題はないでしょう」
 蔵元のその言葉に頷き部屋を出た。

 エレベーターから降りると、先ほどと変わらず崎本さんがいて、葵もいた。
「出張でいらっしゃいますか?」
 崎本さんに声をかけられ、
「えぇ、しばらくは帰ってこられないので、代わりに若槻という部下が俺の部屋を使います。明日には挨拶に寄こしますからお願いします」
「かしこまりました。お体にお気をつけていってらっしゃいませ」
 ふたり揃って腰を折る。