自分の家に入ると、途端に力が抜けた。
 迎えに出てきた蔵元が慌てる。
「大丈夫ですかっ!?」
「あー……大丈夫なようなダメなような……。ちょっと立ち直るのに時間がかかりそう」
「……それは体調でしょうか、心中でしょうか」
 蔵元はこんなときですら、的を射た質問を返してくる。
「両方、かな。でも、こっちの方が若干厄介」
 と、胸を指す。
「何かあったんですか?」
 片腕を引かれて立ち上がると、そのまま支えられてリビングのソファへ連れていかれた。
「昨夜の出来事以外にもまだあったんだ」
「……翠葉お嬢様ですか?」
「そう……。キスマーク、相当ストレスになったっぽい」
 両膝に肘をつき、両手で顔を覆う。
「いったい何が……?」
「お風呂で――ボディタオルでかなり擦ったらしい。キスマークが消えるくらいの内出血だったって。そのうえ、寝てる間に無意識に掻き毟って出血――結構ひどい擦過傷だって」
「まさか――」
 蔵元も息を呑む。
 でも、冗談でもなんでもないんだよね……。
 美波さんが歯切れ悪く切り出したくらいだし。