「蔵元さん、悪いんですけど秋斗をマンションまで送っていって、何事もなくここに戻してもらえますか? 俺、七時にもう一度来るんで、そのときに点滴入れますから」
「かしこまりました。お手数おかけいたします」
「いいえ。こちらこそ手のかかる従兄で申し訳ない」
 楓が病室から出てから蔵元に尋ねる。
「なんで楓?」
「ホテルで倒れられた際、静様が楓様に連絡を入れたんです」
 あぁ、そういうことか……。
 胃潰瘍ということは消化器科。もしかしたら涼(りょう)さんが診てくれたのかもしれない。
「蔵元、悪い。マンションまで頼む」
「わかっています。ですが、下までは車椅子で行きますよ?」
「え? 俺そんな重病人? 歩くくらい大丈夫だと思うけど」
「今は貧血を起こしやすい状態だそうですからダメです」
「……かしこまりました」
 反論の余地なく車椅子に乗せられ、病院の地下出口から表に出た。
 確かに、身体を起こしているだけでも頭がくらくらする。
 これが貧血か……。
 彼女はいつもこんな状態なのだろうか……。