けれども、その直後、
「秋斗様、あなた吐血してショック状態だったんですよ?」
 と、付け足される。
 は……?
 言われてみれば確かに胃の辺りが痛いし、気持ち悪いし、嫌な感じは満載なんだけど、そこまで具合が悪い気はしない。
「今、割と普通なのは輸液を入れて血液量を増やしたからだ。でも、成分的には貧血の状態だから」
 ……貧血ですか。なんて俺に馴染みのない言葉なんだろう。
「……とはいえ、病院から脱走されても困るし。今五時過ぎだから七時までには戻れよ?」
「えっ、マンション戻っていいのっ!?」
「ものがなくちゃ仕事の引継ぎだってできないだろ? それで困るのは秋斗じゃなくて蔵元さんと若槻くんだ」
 なるほど。俺のためではない、ということか。
「一度点滴抜くけど、戻ってきたら再度点滴だから」
 そのとき、自分が点滴なんてものにつながれていることに気づいた。
 楓が針を抜きながら、
「翠葉ちゃんのところには行くなよ?」
「……わかってる」