『そういうことだから、しばらくは栞か美波さんが翠葉に付くわ。秋斗はあの子に刺激を与えるようなことは控えるように』
「……俺、しばらく仕事でマンションには帰らないから」
『……秋斗?』
「若槻と住居トレードすることにした。少し、頭冷やす……」
『自棄になりなさんなよ』
「わかってる……」
『じゃ、そういうことだから。翠葉が落ち着いたらまた連絡するわ』
「電話、ありがとう」
『あまり落ち込むんじゃないわよ? 次に会ったときにしけた顔してたら殴るわよっ?』
「くっ、それは嫌かなぁ……」
『ま、時間が解決してくれるわよ。じゃーね』
 それで通話は切れた。
 耳にはビジートーンが聞こえてくる。
 そのとき、突如胃部からこみ上げるものがあった。
 手で口を押さえたものの、口から滲み出たものがある。
 手には鮮血が付いていた。