光のもとでⅠ

「どうもこうも……。なんか胃が受け付けそうにないんだ」
 いたって真面目に答えたつもり。だが、
「秋斗さん、そんな繊細な人でしたっけ? カフェイン中毒者の代表みたいな人が」
 と、若槻に突っ込まれる。
 でも、そう言われても仕方がない。
 今までの俺なら間違いなくコーヒーを口にしていたし、胃がおかしかろうがなんだろうが、飲み物はコーヒー以外にあり得なかった。
 そこにハーブティーなんて選択肢が加わったのは今年の四月、彼女と出逢ってから。
「秋斗様、胃の調子がよろしくないのでしたらお粥をお持ちいたしましょうか?」
「いや、朝食くらいは普通に食べられると思います」
「……あまりにも痛むようでしたら、事務所に胃薬がありますのでフロントにお申し付けください」
 そう言って須藤さんは部屋から出ていった。
「らしくないっていうか……意外な一面っていうか……」
 言いながら、若槻が頬杖をつく。
「悪かったな、らしくなくて意外で」
 昨夜、冷たい飲み物ばかり飲んだからなのか、アルコールを飲んでいたからなのか、妙に胃のあたりがズキズキと痛んでいた。