光のもとでⅠ

「朝食をお持ちいたしました」
 と、カートからプレートを取り出し並べる。
「須藤さんがどうして……?」
「大変申し訳ないのですが、この時間はフロア担当、ホール担当、どちらも出払っていまして……」
 なるほど。言われてみればそういう時間帯だ。
 しかも、今日は土曜日だから宿泊客も多いのだろう。
「秋斗様、コーヒーをどうぞ」
 目の前に差し出されたカップを手に取ると、いい香りが鼻腔をくすぐる。
 けれど、どうしてか飲める気がしない。
「須藤さん、悪いんですが何か胃に優しそうな飲み物ありませんか?」
「秋斗さん、珍しー……。ここのコーヒー大好きでしょ?」
 若槻に言われて苦笑を返す。
「ハーブティーでしたらすぐにご用意できます。どれになさいますか?」
 須藤さんに差し出されたバスケットには、ローズヒップ、ラベンダー、カモミール、ミント、ローズマリーが並ぶ。
「これで……」
 選んだのはカモミールティー。
 須藤さんはすぐに用意をしてくれた。
「どういう心境の変化ですか?」
 蔵元にまじまじと訊かれる。