こんなことに気づいたって困るだけ。
 俺の中の男の部分が彼女を求めて止まない。
 それをどうしたらいいのかがわからない。
 衝動でほかの女を抱いたとしても逆にストレスが溜まりそうだ。
 彼女にしか受け止めることができない想いが俺の中にある。
 側で笑っていてほしいのに、最近は泣かせてばかりな気がする――。



「――秋斗様」
 突然目の前に現れた蔵元に驚く。
「いい加減出てこないと身体中しわっしわになりますよ……」
 妙に呆れた顔をした蔵元がバスルームに入ってきていた。
「蔵元、いつからそこに!?」
「部屋に入ってきたのは五十分ほど前ですが、バスルームへは二、三分ほど前に入りました。全然お気づきになられないようでいたのでしばらく観察させていただいたしだいです」
 ……不覚。
「今、何時?」
「八時です」
「……嘘だろ?」
 記憶が確かなら、俺は六時に起きてバスルームへ直行したはずだ。