楓は怒ると口を利かなくなる。そうだとしたら、理由を教えてくれるとは思えない。
 司は渋々ながら答えてくれるだろう。けれどもあまり訊きたい相手でもない。
 蒼樹は――俺に原因があるとすれば、蒼樹も怒っているだろう。
「はぁ……」
 恋愛でこんなに行き詰まることがあるとは思いもしなかった。
 両思いのはずなのに、何もかもがうまくいかない。
 まるで、噛み合わない歯車のようだ……。
 俺と彼女の間にある壁はなんだろう。
 経験値? 年齢? 欲求?
 ……すべてが当てはまりそうだ。
 間違ってはいないと思いたい。彼女が俺に抱いている気持ちが"Love"だと。
 仮に、翠葉ちゃんの俺に対する気持ちが"Love"ではなく"Like"だとしたら――。
 気持ちの温度差までもが存在することになる。
 もし"Love"だとしても、若槻が言ったようにステージ違いで俺の気持ちのほうが重いのだ。
 恋愛偏差値の高い低いではなく、気持ちの重さ。それは絶対的に俺のほうが重いだろう。
 両思いでも片思いの延長線にいる気分だ。