それと、兄さんに見せる顔――。
 あんな表情は御園生さんに向けたところしか見たことがない。
 少し癪だけど、でも、それは兄さんが医者として翠に接してきた時間がものを言うのだろう。
 その人間と自分を比べるのは違う……。
 ――早く医者になりたい。
 翠の助けとなれるように、少しでも翠に必要だと思ってもらえる人間になりたい。
 どうして俺は十七歳なんだろう……。
 ――否、問題はそこじゃない。そんなことは問題じゃない。
 今の俺にだって何かできることはあるはずで、翠にかける言葉ひとつとっても未熟なんだ。
 どうしたらこんな自分を変えることができるだろう。
 そんなことを考えていると、携帯が鳴った。