素直に言葉を受け取れない。結果――。
「いや……ただ何時か確認するのに携帯見たら血圧の数値が高かったから」
 そんなふうにしか答えられない自分がいる。そんな自分にも苛立ちを覚えていた。
「さ、もういい時間だ。蒼樹くんと司は休んで?」
「翠の点滴は?」
「俺、明日夜勤だから点滴が終わるまでついてるよ。……翠葉ちゃん、余計なこと考えてない?」
 兄さんが翠の顔を覗き込むと、翠は少し表情を和らげた。
「翠葉ちゃんも休もう?」
「……はい」
「よし、いい子だ」
 御園生さんと同じ――兄さんも翠に警戒されずに近づける人間……?
 そんなことが頭をよぎる。

 姉さんの家に戻ってきてもなお、翠のことが頭から離れなかった。
 きっと始めは御園生さんに助けを求めたのだろう。
 けれども、御園生さんは寝ていて気づかなかった。
 御園生さんらしくはないけれど、この人も疲れていたのかもしれない。
 俺が気づけて良かったけど、あんなに泣くほどの頭痛をいったいどれくらいの間我慢していたのだろうか。
 そっちのほうが気になった。