ある意味、美鳥さんのこのペースに臆面なく対応できるこの人は珍種だと思う。
 御園生さんは、きっと相手がどんな変わり者だろうと普通に対応できるのだろう。
 己が警戒しないことで相手の警戒心を解くような……そんな何かを持っている気がする。
 それは翠も同じなのかもしれない。
 どこか、心の中にするりと入り込んでくる……。
「司くん、先ほどから玄関の方が気になっているようだが、何かあるのかね?」
「……正確には、玄関から一番近い部屋です」
「ほぉ……そこで翠葉くんが休んでいるのだろうか?」
「そうです」
「で? 君がそんな顔をする原因はなんだろう?」
「……気になるだけです」
「その気になる原因が知りたいのだが。教えてはくれまいか?」
 ……なんて答えたらいいんだ……。
 言葉に詰まっていると、御園生さんが助け舟を出してくれた。
「実は、妹には消化できそうにない大きな出来事がありまして、ただいまひとりでそれと対峙しているところ、といった感じなんです」
「なるほど、因みに妹君はおいくつだろうか?」
「十七歳です。今は海斗くんのクラスメイトです」
 御園生さんにその真意があったかはわからない。けれど、美鳥さんは咄嗟に年の計算を済ませたようだ。