玄関でドアレバーを引く音が何度かした。それは途切れることなく続く。
 四人揃って音のする方へと視線を向けた。翠と御園生さんが不思議そうな顔をしてはいるものの、俺と栞さんはドアの外に誰がいるのか予想がついていたと思う。
「俺が出ます」
 と、御園生さんが立ち上がると栞さんもそれに続く。
「翠葉ちゃん、大丈夫よ。このマンション、変な人は入ってこれないから」
 翠はというと、未だ続くガチャガチャという音に耳を傾けたままだった。
「びっくりすると泣き止むんだ?」
「あ……えと、ごめんなさい……?」
「別に謝らなくてもいいけど……」
 ただ――。
「あまり無理はしてもらいたくない」
「なんだか……全部が無理なことに思えてきてどうしたらいいのか……」
 翠は色んなことを背負いこみすぎだと思う。間違いなく超過ならぬ積載オーバー。
 普通、自分に背負える積載量くらいは心得ているものだと思うけど、翠においては定かではない。
 翠は無理に笑おうと表情を繕った。
 ……そんなこと、しなくていいのに。
 そのとき、玄関から栞さんの声が聞こえてきた。