「俺ね、確かにオルゴールが見つかったら死んでもいいと思ってたし、見つかったら生きてる理由もなくなると思ってた。でも、安心して? 今はそんなに刹那的じゃない」
 唯兄は一度言葉を区切ると、再度口を開いた。
「リィとあんちゃんと話してると思うんだ。兄妹ってこういうものなのかな、って……。ほら。俺は実の妹が恋愛対象だったから、兄妹って関係が俺にとっては初体験なんだよね。……だから、まだ当分はリィの側を離れるつもりはないよ。安心して学校に通って? まだしばらくはマンションにいるし、秋斗さんが帰ってきたとしても、俺はいつでもホテルにいるから」
「……本当に?」
「うん」
「急にいなくなったり連絡取れなくなったりしない?」
「約束する。だから、多少離れていても俺が不安にならないように、リィは極力元気に過ごしてください」
「……はい」
「よし、いい返事だ!」
 ふたりで空を見ながら話していると、あっという間にお昼になった。
 突如、携帯や固定電話が鳴り出す。
 携帯は桃華さんからで、固定電話は司先輩から。
「わ……どうしよう。メール送るのすっかり忘れてた」
 攻め立てるように鳴り続ける着信音に、私はひとつのことから逃げた。
 "人の死"という問題から。
 手紙を読んで一番衝撃的だったのはそこなのに、私はそのことには触れず、読まなかったことにしてしまいたかったのだ。
 人の死とはまだ向き合いたくなくて――。