「唯兄?」
「ん?」
 背中合わせに座っているからか、言葉を口にすると背中から振動が伝わる。
「唯兄はお姉さんのことが好きだった?」
「……好きだったよ。世界で一番愛してた。いや……今も、かな」
「……それはちゃんと恋愛の意味で?」
「そう……ひとりの女の子として好きだった。妹だったけど、恋愛対象だった」
 私はその言葉に安堵する。
「……気持ち悪い? 引いた?」
 唯兄の声が少し震えているのがわかる。
「ううん、良かったな、って思ったの。それから、唯兄がお姉さんを好きなら教えてあげる」
「え……?」
「背中合わせ、やめてもいい?」
 唯兄の顔を覗き込むと、ひどく気まずそうに了承してくれた。
 どこか戸惑っている唯兄と横並びになってお話しをする。
 手紙に書かれているお花の名前たち。それは私にはとても馴染みのあるものだった。
「金木犀は初恋、ハナミズキは私の想いを受け止めて、チューリップは永遠の愛、ストックは永遠の恋、セージは健康や長寿、家庭の徳。クローバーは私を思い出して、ワスレナグサは私を忘れないで、紫苑はあなたを忘れない、都忘れはまた会う日まで、カモミールは苦難に耐えて、あなたを癒す。……花言葉。どれも私がお姉さんに教えてもらったものだよ。きっと、唯兄へのメッセージだと思う」