少し丸っこいフォルムのカップはカフェボールと呼ばれるもの。
とても大きなカップだけれど、それ以外のものが目に入らずそれに決める。
カウンターにふたつのカップを並べると、その大きさに唯兄が目を瞠った。
「……だめ?」
「……いや、ダメじゃないけど。三百五十? いや、もっと入りそうかな?」
言いながら、「これだけあったらたっぷり話ができそうだ」と笑った。
たくさんのお話――。
「……そんな不安そうな顔をしなくていいよ」
ツン、と頬をつつかれる。
お湯が沸いたことをケトルが知らせると、
「私がやるっ」
と、咄嗟に手を出したら熱かった。
「リィっ、すぐに冷やすっ」
ザーッと音を立てる流水に人差し指と中指を晒す。
「そりゃ、そのまま触ったら熱いよ」
唯兄は言いながら私の右手を握っていた。
「ごめんなさい……」
「いや、謝らなくていいけど気をつけないとね? 女の子なんだからさ」
その言葉はとてもあたたかかった。
言葉に温度があるとしたら、きっと四十度。
熱くもなくぬるくもない、ほっとできる温度。
とても大きなカップだけれど、それ以外のものが目に入らずそれに決める。
カウンターにふたつのカップを並べると、その大きさに唯兄が目を瞠った。
「……だめ?」
「……いや、ダメじゃないけど。三百五十? いや、もっと入りそうかな?」
言いながら、「これだけあったらたっぷり話ができそうだ」と笑った。
たくさんのお話――。
「……そんな不安そうな顔をしなくていいよ」
ツン、と頬をつつかれる。
お湯が沸いたことをケトルが知らせると、
「私がやるっ」
と、咄嗟に手を出したら熱かった。
「リィっ、すぐに冷やすっ」
ザーッと音を立てる流水に人差し指と中指を晒す。
「そりゃ、そのまま触ったら熱いよ」
唯兄は言いながら私の右手を握っていた。
「ごめんなさい……」
「いや、謝らなくていいけど気をつけないとね? 女の子なんだからさ」
その言葉はとてもあたたかかった。
言葉に温度があるとしたら、きっと四十度。
熱くもなくぬるくもない、ほっとできる温度。


