蒼兄の目覚まし時計は頭の上なんだ……。
 そんなことを考えながら、改めて部屋を見回す。
 どうしてこの部屋に三人いるんだろう?
 不思議に思いながら洗面を済ませに行くことにした。
 私の基礎体温計が鳴ったということは、七時を回ったことを意味するのだから、そろそろ学校へ行く支度を始めなくてはいけない。
 ゆっくり起き上がると部屋のドアがそっと開いた。
「……翠葉お嬢様おはようございます」
 ドアを開けたのは蔵元さんだった。
「……おはようございます」
 気まずそうな顔をして、
「人を探しておりましたらこちらの部屋へたどり着きまして……。寝起きのお顔を拝顔するつもりは決してなかったのですが……」
 まるで次には、「無礼をお許しください」という言葉が続きそうなかしこまり具合だ。
「あ……えと、唯兄ならそこで丸くなって寝ています」
「そのようですね」
 蔵元さんは唯兄を視界に認めると目尻を下げた。