「はいはいはいはいっ。いったんそこまでっ。みんな待ってるんだからご飯にするよっ」
「じゃ、先にご飯にしよう? 今日は俺もごちそうになることになってるから」
 リィの背中に手を添え、ダイニングの席に着く。
 もおおおおっっっ、秋斗さんのカバったれっ! 俺の努力が水の泡じゃんかっ。
 チョコレート会社の商売戦術とかどうでもいいからっ。
 恨みつらみをこめた視線を向けると、なんともにこやかな笑顔を返された。
「そんなの怖くもなんともないよ」って言われた気分。
 ふっ……でも、秋斗さんは敗北を味わうことになるからいいもんねっ。
 リィ、俺たちにはマフラーを編んでくれたんだからっ。
 食後にお菓子とマフラーをプレゼントされ、その場でぐるぐると首に巻いた。優越感たっぷり、鼻高々と。
「いいなぁ……。唯、それ、高価買取するよ?」
 言われると思った。
「ふっふっふ……億単位で積まれても売りませんよ?」
「じゃ、休暇とかどう?」
「――いやいやいやいや、渡しませんからっ」
 一瞬、秤にかけて真面目に考えた自分が愚かしい。