「もらって迷惑するほど編み目がひどいわけじゃないし、普通に使えると思うけど……」
『……本当?』
「……こんなことで嘘をつくほど面倒な人間じゃないつもり」
『そっか……そうだよね。あ、お菓子は? 食べてくれた?』
「今、食べながら本を読んでた。どっちも美味しかった」
『よかったっ! また作ったら食べてくれる?』
「いつでもどうぞ」
『あのね……』
 言葉の途中で声が途切れる。
「翠?」
『あのねっ、お菓子はたくさん作ったけど、マフラーは蒼兄と唯兄とお父さんとツカサにしか編んでないのっ。それとねっ、お菓子っ……お菓子も、家族の分とツカサの分は機械使わないでちゃんと自分で作ったのっ』
 やけに必死になって言うからおかしかった。