学園中が浮き足立つシーズン。それは毎年進級テストの直後にやってくる。即ち、バレンタイン。
 自分にとってはこのうえなくどうでもいいイベントで、できることなら一切の関与を拒否したいところだが、そうはさせてもらえない世の無常。
 その無常に対抗すべく、落し物扱いを始めたのがいつからかなんてもう忘れた。
 魔の一日の始まり、登校すれば下駄箱にいくつかの包みが突っ込んであるわけで、俺はその包みをひとつ残らず下駄箱の上に放置する。
 食べ物を下駄箱に入れるという神経が俺には理解できないし、人の下駄箱やロッカーを勝手に開ける神経も理解しかねる。
 とりあえず、自分のものではない意を示すため、下駄箱から出して放置するわけだが、中身が生か何か知れないもののため、その日のうちに回収されなければ事務室に落し物として届ける。