「あー外暑かった」 「お疲れ様です」 外回りから帰ってくるなり、萩原さんは黒く重たいスーツをバサッと脱ぎ捨てた。 本当に暑かったのだろう。 その証拠に彼は、額にうっすらと浮かべた汗を手の甲で拭った。 「毎年思うけど、夏のスーツはキツイよ」 「もうすぐですよ、クールビズ週間」 よかったですね、なんて言ってみせるけど私はソレが嫌いだ。 だって、私は今が好きだから。 この時期でしか見られないモノが好きだから。