健斗の顔は見えないけど、驚いているに違いない。

私もなんでこんな事をしたのか…

まわりの通学中通勤中の人、ゴミ出しの途中だと思われる主婦の方が

みてるっ

けど……


「健斗っ健斗っ、泣かないでよぉーおねがいっ、ねっ?って私、こんなことしか言ってあげられないの。そんな近い関係でもないしさ、こんなことしか言ってあげられないの。でも、でも…私健斗の事知ってる、この周りの人たちより私の方が健斗の事知ってる。ねぇ、覚えてる?」


私は健斗をしっかり立たせて向かい合った。


「初めて会った日、全然話してくれなくってホントは飽き飽きしてたの。それで私、他の子の所行こうとしたの。そしたら健斗は私の手をつかんで“行かないで、君は僕の友達だから、行かないで、遊ぼう?”そう言ってくれたの。私、友達って言葉自分が友達だって思ってる子から聞いたことなかったし、すっごい嬉しかったの。それから私、いつも以上に学校に行くのが楽しみになって…いつも遊んでるとき、健斗が優しく気遣いしてくれてたのも、あとで気づいたんだ。“あの子、ホントはやさしい子なんだ”って思った。小さいころから気遣いも出来てたんだよ?健斗が大きくなってその心が消えるわけないじゃんかっ!健斗と玲奈ちゃんが付き合ってた頃の事私は知らないけど、多分玲奈ちゃんも健斗の優しさも含めて好きになったんじゃないかな?だから自分を責めたりしちゃだめだよ?健斗は私より何倍も何倍もいい男だよっ」


私、なんかすごぉーくすごぉーくながぁーく話してた気が…

そして周りの目も…気になって気になって…


「健斗、行くよっ」


次は健斗の腕をつかんで走り出していた。