ヴァンタン

  「ごめん。移動するね」

そっとカバーを開け、聞こえる筈もない位に……
小さく囁く……

何時も作戦開始の合図だった。


「全くもう……。早くしないとお風呂が」
私の企みも知らすに、背中を押す母。


「解った解った。すぐ入るよ」

そう言いながら、シメシメと思う私。


「じゃあお言葉に甘えまして……バスルームへ直行します」
私は手を顔に充て敬礼ポーズをとった。