ヴァンタン

やっと起きたチビと下にある船長室に行った。


でも其処にも誰も居なかった。


「まるで幽霊船だね」
アクビをしながらチビが言う。


「そんな事言わないで、本当になったら怖いよ」
弱気な私。

それを聞いたチビは臆病な私を笑った。




「見て、テーブルに名前がある。キャプテンバッドだって」

チビが言う。
私は早速駆け付ける。


キャプテンバット……
以前パパから聞いた名前だった。


「キャプテンバッドって、あのキャプテンバッド?」
私は震え上がった。


「おねえさんもパパから聞いたの? 格好いいよね、キャプテンバッド」
チビが意外な事を言った。


――キャプテンバッドが格好いい……?


――そんな事言ったかな?
もう私は過去の記憶に自信を持てなくなっていた。