ヴァンタン

 いきなり浴室のドアが開いた。


ドキッとした。


――パパ!?。

そう言おうとして、又固まった。


「今度は長っ風呂?」

呆れ果てたような母の姿。

私は思わず、遊んでいたフェイスタオルを湯船で潰した。


「何でも長いね」

母の愚痴が身にしみる。


私は何故か、母を見詰めていた。


何時も母の傍に居た……

きっとそれはパパの居ない寂しさを紛らす為だったのだろう。


「ありがとうお母さん」

私はそう言いながら泣いていた。