ヴァンタン

鏡がヒビ割れる。


「鏡を見つけた時言われた事がある。何度もヒビ割れた鏡は、乙女の鮮血で蘇ったと」

パパが言う。


「さっきも聞いたけど、その乙女の鮮血って一体誰の血なんだろう?」


私は思わず自分の手首を見詰めた。


――もしかしたら死ねって事!?
私は血の流れる手首を想像して顔を青くしていた。




「パパ達は公海上であの幽霊船に出会ったんだ」


「キャプテンバッドの幽霊船?」


「そして其処の宝物こそが魔法の鏡だった」


「もしかしたらその鏡にキャプテンバッドの魂が宿っていたとか?」


「ああそうらしい。その為にこんな目にあった」


――違うよパパ。悪いのは私だよ。


――そうだ。私が魔法の鏡が欲しいなんて言わなかったら……


――パパを苦しめ事はなかった!