ヴァンタン

「真面目だね」

私はチビを称えた。


「ありがとう。チビ、あんた格好いい!」


――そうだった。私はおだてに弱かった。


――だからフェンシングだって……


――でも何故今私は遣っていないのだろう?

考えても判る筈などなかった。


それはきっと母の……

それはきっと母を悲しませまいとした行動……

パパの居ない寂しさを、パパの思い出で上乗せしたくなかったからだろう。