ヴァンタン

  「あ、ジョー……ごめん。何だか寂しいよ」

雅に本音を聞いて貰いたかった。


でもそう言ったまま私は固まった。

仕切りのドアの向こうに母の影がチラついていた。


「全くアンタ達は……。そうか、だから携帯買う時防水にしたのね」
そっと風呂場を覗いた母の愚痴が始まる。


「いいじゃない。無料なんだから」
反撃に出た私。
でも軍配は服を着ている母に上がった。

で結局、私は携帯を取り上げられてしまった。


「ちゃんと雅に謝っておいてよ」


「解った、解った。だからほら、ちゃんとお湯に浸かって」




 仕方なく又湯船に浸かる。

空っぽになった頭で、久しぶりの至福の時間。
女子会専門で、男っ気の全くない私達。


やっと最後にお酒を呑める年になる。
だから尚更嬉しい筈なのに……