「仲木」



そう言って、私たちの間で静寂が築かれ始めた一分位のことだろうか。



「なんですか」



身体は進む方向の左のドアを向きながら、視線だけを先生に送る。



「本当は思ってないだろ、それ」



ククッ、と人を馬鹿にしたように笑って。
あたしは更に不機嫌な態度を取りそうになって、堪える。




「俺はお前のこと、お前が思ってるよりは良い奴じゃないか、と思う」


「……何ですかそれ、そう思いたいだけじゃないですか」


「そうかもな」



ははっと自嘲気味に笑う先生。
その姿はやけに悲しそうに、何故かあたしには映ってしまった。