ミックス・コーヒー

「んで、逃げてからもう一回作戦を練って出直す」

「ま、そりゃそうだな」
 付け加えられた尚樹の言葉には、貴之も納得した。 

「とりあえず呼び鈴鳴らしてみるか」

「貴之さん、どうぞ」

「黙れ」


 結果、若干震える指で、貴之がボタンを押した。
 ピンポーン、と家の中で電子音が響いた。

『はい』

 しばらくして、インターホンから聞こえてきたのは、女性の声だった。
 貴之達は最初、美葉かと思ったが少し違うようだ。

「あ、すみません、近所の者ですけど……」
 貴之は、あらかじめ立てておいた作戦通りに言った。

『なにか?』

「ちょっとご挨拶に……よろしいですか?」

『……お待ちください』